本シリーズは私が20代前半の頃のお話。特に記憶に残る事柄、人物を追って記述していく。読み物にするにあたり、誇張もしたいところだが、ほぼそのままと言っていい。むしろマイルドにしていたりもする。時間軸についてとか、少しあいまいな記憶もあるんだけど。
で、さっそくそのあいまいな部分。会社の創立何周年とかの規模のパーティーが行われた。大きな集まりだったはずなのになぜかそこは記憶がない。年商〇億突破しました!みたいなことを社長が上機嫌で発表していたのは覚えている。私が関わったホームページ、PC販売では大きな売り上げになっているとは全く考えられないわけで、この原動力は例のアヤシイ商品以外にはない。
特に好調なのがゲス谷を含む若手営業チーム。正直不安だ。のんきにビンゴゲーム大会などやっている場合ではない。私が営業体験をした際、すでに業界内で怪しまれていたこの商品に会社の未来を託すのはあまりに危険だ。ビンゴでDVDプレーヤーをゲットしている場合ではないのだ。しかし、若造である私になにが出来よう。目の前にある仕事を片付けるので精いっぱい。あとはなるようになれ、だ。DVDプレーヤーはいらなかったのでヒグチ家にあげた。
さて。各地の営業さんが起こすトラブルに巻き込まれるシリーズはまだネタがあるのだが、それは次回にまわして、人物にスポットをあててみよう。
いつのころだろう、会社から名刺を支給されたのだが、そこには『インターネット事業部』とあった。会社の組織図を見る限り、そんな事業部は存在しておらず、私単独でインターネット事業部。正直よくわからない。そんな、どこに所属してるかわからない、サダ部長(仮名)という人がこれまたいつごろからか、私が働く本社オフィスに出入りするようになっていた。
非常におっとりとした喋り方の独特の雰囲気の人だ。芸能人で例えるなら十人中十人が蛭子能収の名前をあげるだろう。
「もぉ~~しぃ~~、サダでぇ~す」
こんな感じで電話にでるサダ部長。なんでこんな風に仕上がってしまったのか、疑問でならない。これを読むあなたの会社にも定時になると同時に出て行ってしまうような人はいるかと思うが、サダ部長はすごい。定時10分前には身支度が終わっていて、定時5分前にはそわそわして、もういいよね?ってな感じで出て行ってしまうのだ。こんな社会人もいるんだ・・・という衝撃。そしてこの人はそれだけでは終わらない。
なにかと葬儀で早退する。葬儀で休む。もうとにかくいろんな人が死ぬ。私が最後に言われて覚えているのは、
「昔お世話になった先生のね、友人の奥様が亡くなられて。葬儀に出なくちゃだから今日は帰るね」
こんな感じ。もう何度も言い訳に使っているせいで、ついには血のつながりもなくなり、随分縁の遠い人の葬儀になっていた。
そんな感じで気がつくと帰ってしまうサダ部長。ついに社長がブチ切れる。
「今度は誰が死んだんだ!サダの家系図を持ってこい!!!」
魂の叫びというものを聞いた。
みなさん、どうしても会社を休みたいときには上手に嘘をつこう。
今回はここまで。
<つづく>