その10.能ある鷹は

「泥船会社盛衰記」連載!

私がPC関連のトラブル解決に奔走している間、例のアヤシイ商品の売り上げは落ち込んでいた。私が営業体験した時点でターゲットの業界内では有名になりつつあったのだから当然の展開といえる。営業の腕があろうとなかろうと相手にされないわけだ。

この事態に打たれた対策はリストラだった。(今思えば、私をダシにしてこぞって仕事を取っていた人たちはこの流れを予期していたのかもしれない)本社営業チームも例外ではなくターゲットだ。ブログには登場していないが、全部で6人ほどのチーム。営業成績の悪い人がクビとなる。私が営業を教わったナマムラさんは良質の客を取れる営業さんだが、本数を稼いでいる人ではない。よく話相手になってくれたタルサキさんも営業成績は上位ではなかった。私自身はホームページやパソコン関連のこともあるし、今回は対象外。安全圏から結果を眺めるだけだ。

2人ともお別れか・・・正直そんな風に考えていた。

しかし。

ただ一人生き残ったのはタルサキさんだった。正直、成績をあそこから盛り返したのは意外だった。まさに「おっぺしちまえばいいんだよ!」を自ら体現してしてみせたと言える。そしてここで怖い顔のオニツカ部長も、事務受付の女性も、ナマムラさんもいなくなってしまった。

がっつりと人が減ってしまい、ますます危うい雰囲気が漂うその日の終業後。駐車場でタルサキさんと二人、何気なく会話を交わす中、驚くべき言葉を聞かされる。

「もともと東京で会社やってたんだけどな・・・田舎でのんびりやるつもりで辞めてこっちに来たのに・・・変なことになっちまったな・・・」

(この人社長だったの・・・?!)

「金融系だったんだけど・・・いろいろあったよ。人が首吊ったのも見てきたし・・・」

(ハ、ハードすぎる・・・!)

別世界過ぎて言葉を失う私。かなりの修羅場を経験してきた猛者だったのだ。こうなってくると『おっぺす』もなんだか怖い言葉のような気もしてくる。

(動画は川辺さん情報による『おっぺす』)

ずっと成績が上位ではなかったのもわざとということ。能ある鷹は爪を隠す。トップも最下位も取らず目立たず、吉良吉影のような生き方でも目指していたのか。私としては、組んで仕事のやりやすいタルサキさんが残ってくれてありがたくはあるのだが、この日を境に少し怖さを感じるようになってしまった。

・・・なにはともあれ、この船はまだ沈まず、もう少しあがく。

社長が考える新事業。

更なるトラブルメーカー「常務」の出現。

書き残すことはまだあるが、次回は少し脱線したことを書こうかと思う。

<つづく>

「ダブルオーゼロ」よりスタッフとして参加。スタッフ兼エキストラとして活動していたが、2012年より役者にチャレンジ。

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