その12.箱の中身はなんだろな

アヤシイ商品をあきらめた社長の次なる一手。その名もパンドラボックス。いや、このブログ上では仮名なのだが、実際の名称も自社製品にそんな名前つける?というレベルのものであったことはお伝えしておきたい。

で、そのパンドラボックスってなんなの?って話だ。社長がどこぞから見つけてきたその機械、ざっくり言うと『文字情報と映像を重ねて、1つの映像として出力する』というものだった。これだけだと社長の狙いがよくわからないし、また文字情報!?という不安が大きい。

順番に解説しよう。まず文字情報。これは、パソコンから出力される文字情報を扱うということ。すでに専用のソフトウェアが開発済み。さっそくPCとパンドラボックス、テレビを接続し、PCソフト上で文字を入力するとテレビ上にスクロール表示された。つまり、待合室などに置いてあるテレビにお店側の情報を出力する、といった使い方ができるわけだ。一応今回は広告料が発生して儲かるというアヤシイことはしないらしく、そこは安心。

そして映像部分。テレビ放送にテロップを入れるような形でテストしたが、実際には勝手に情報を重ねるのは問題があるらしい。(よく調べてないんですけどね。)販売にあたっては権利上問題が無い、環境映像を用意していた。

ここまで聞いて、ちょっと面白そうな仕組みではあるが、環境映像一本というのは弱い。社長もそこはわかっているらしく、

「映像を買い取るのも高いので自力で撮りたい」

きました、ムチャぶり。

鑑賞に堪えうる自然の映像を自分たちで撮る・・・?いま本社でこの説明を聞いているのは私とタルサキさんの二人。小旅行気分で二人でどこかに行けるなら楽しいかも・・・と思っていると、これを任されたのはタルサキさん一人。加えて特に予算も出ないので小旅行気分になることも不可能。ご愁傷様。営業の合間に近所で何を撮れというのか・・・。

今回は巻き込まれずに済んだかな、と思っていた。

が、しかし、その数日後。

私は九州にいた。

当然ではあるが、パンドラボックスに対しての社長の気合はすごく、グループ会社にもどんどんアピールをして各地で売ろうと躍起であった。新たに提携先となる会社と打ち合わせのためにあちこち行く必要があるわけである。その際に、

「ちょっと一緒に来てくれるか?」

この程度のお誘いで、あれよあれよという間に九州、というわけである。なにをするのかも良くわかっていない。現地に着き、部屋に通されると、なにやら箱がある。我々より先に送られたであろう箱。なんてことはない、PCが入った箱だ。このPCをセッティングしろ、ということなのだ。社長たちが商談をしている間、箱から出し、机の上にセット、初期設定を終えると私の仕事は終わった。

・・・。

誰でもできるよ!

こんなことのために泊りがけで九州ってなんなんだよ!

リストラも行われていろいろ経費も削減しようとしているのに・・・。

その後、なにやら夜の街に繰り出そうとする社長に誘われるが、全くもって遊ぶ気にはならない。丁重にお断りして、とっとと就寝。翌日すぐに帰宅。なんの思い出もない九州出張となった。

2017年現在で考えると、デジタルサイネージのような使い方も考えられるこのパンドラボックスであったが、その後も泣かず飛ばず。タルサキさんも沈む夕陽などの映像を頑張って撮っていたが、会社を救う商品とはならなかった。

やはりこの船は沈むばかりである。

<つづく>

「ダブルオーゼロ」よりスタッフとして参加。スタッフ兼エキストラとして活動していたが、2012年より役者にチャレンジ。

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